PAGE TOP

心理学科

2024.05.28

授業風景-錯覚について学んだこと


 ヘルマン・ヘルムホルツ(Herman Helmholtz)は人の知覚を「無意識的推論」による「最も確からしいことへの賭け」と表しました。1年生を対象にした心理学概論の授業で、知覚のおもしろい側面として知られている「錯覚」のメカニズムを解説しました。

 水谷さんのコメントを読んだ時、授業では示さなかったペンローズの三角形に思いを馳せ、「無意識的推論」を「帳尻合わせ」であると理解したことに思わず膝を打ちました。彼は「無意識的推論」を「帳尻合わせ」と表したのです。

 さらに、この挿絵です。水谷さんに文章に添える挿絵も頼んだところ、「やってみます」と言ってくれました。およそ10時間かけて描いてくれたそうです。どうもありがとう。

                 科目担当  五島
錯覚について学んだこと

 高い性能を持った人間の脳はときに「錯覚」を生み出す。授業で錯覚を学んだ私は、今まで「正しい」と思い込んでいた対象に対して,「誤った」見方をしていることがあるのではないかと考えた。

 ものを見るとは、網膜像から神経系で処理・抽出された情報をもとに、脳が最もありそうな見込みの高いと推定されるものを合成し外界の世界を構成している。つまり、人の視知覚の成立は、「最も確からしいことへの賭け」であるといえる。しかし、この脳が行う“賭け”は、一定の条件下で失敗してしまう。これが、錯覚だ。

 私はこのことを学んだとき、錯覚とは、対象を全体的に見たときに起こる脳の「帳尻合わせ」だと解釈した。幼少の頃に、ペンローズの三角形を見たことがある。部分的に見ると変わったところはないが、全体的に見たときには、あり得ない形をしている。これを見たとき私はとても不思議に感じた。しかし、 今回錯覚について学び、脳が不可能図形を全体的に捉え、無意識的推論によって帳尻を合わせていたのだなと理解できた。  

 さらに、講義内で行った「The Invisible Gorilla」(Christopher Chabris & Daniel Simon)などの選択的注意力の実験では、内発的注意を向けない限り、その違いに気づくことができないと学んだ。こうした錯覚と選択的注意の実験から,一点に集中した人間の視覚は無意識的及び選択的に盲点を作り出し、意識しない周りの情報を簡単に見落としてしまうのだなと,私は考えた。もしかしたら、日常生活の中で何かに没頭している最中に我々が気付かないだけで、ゴリラが横切っている可能性すらある。

 このように、私たちが住む現実は人間の脳が「帳尻合わせ」や「選択的注意力」によって巧妙に作りだしているのではないか。私たちが当たり前のように目にしている現実を新しい角度で見てみると、全く違う景色が見えてくるかもしれない。

                       水谷悠人 
  

お知らせ一覧を見る