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心理学科

2024.06.04

視界に入るものが全て見えている訳ではない ~脳の予測と意識の向き方~


授業風景―

こちらも、先立って掲載しました「知覚のメカニズム」に関する授業後のコメントです。大曾根さんはすでにこの実験を中学生の時に体験して知っていたため、動画の実験が目的とする注意のメカニズムとは異なる,“注意の仮説実験”を行い、その結果を書いてくれました。

彼の実験結果は、「トップダウン処理(概念駆動型処理)」と言われる情報処理をよく表しています。

これを読んでくださっている皆さんの中に,先に掲載している水谷さんの絵でゴリラに気づかなかった方がいらっしゃいますか?もしゴリラに気づかなかった方も,今後,水谷さんのあの絵を見る時には,ゴリラが見えると思います。この現象が,今回,大曾根さんが“仮説実験”で証明してくれた「トップダウン処理」です。

科目担当  五島
視界に入るものが全て見えている訳ではない ~脳の予測と意識の向き方~

 中学1年生の社会の授業で「見えないゴリラ」を初めて見た時、私はゴリラに気がつきませんでした。授業でこの実験を行った時,内容を知っていたため自分なりの実験をして視覚の機能を試しました。

 当時はゴリラに気づけなかった理由を、ボールを追うのに集中しすぎたことや、ゴリラと背景の色が似ていたから見えなかったからだと考えていました。しかし、大学の授業で、私たちは目から入ってくるものが見えているだけでなく、脳が予測し期待するものを見ていることを学びました。それで、中学生の時は、ボールが次にパスされることを予測しながら見ていたのだとわかりました。

 それでも、「本当に目だけで見ていないのか」と不思議に思い、授業で動画を見たときには、ボールにだけ集中することにチャンジしました。もし目だけで見ているなら、ボールに集中すればゴリラは見えないはずだと考えたからです。

 動画が始まり、集中してボールを追っていましたが、ゴリラが出てきた瞬間に意識がゴリラに向いてしまいました。初めて見たときには見えなかったゴリラが、今回は出てきた瞬間に見えてしまいました。ゴリラが出てくると脳が予測したために見てしまったと考えます。

 中学生の時と大学の授業で2回動画を見たことで、人は情報を予測して見ているという視覚の機能について、身をもって学ぶことができました。

                   大曾根 晶

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